5時開店に合わせて行ったところ、少しだけ開くのが遅れたようで、「臨時休業」かと焦りました。
食べたモノを簡単に書いておきます。
・ビワとエノキ
・ジュンサイの冷やし椀
・よこわとケンイカのお造り あしらいに松菜
・鮎の塩焼き
・万願寺唐辛子の炊き合わせ
・鯵の笹寿司
・カミナリ瓜と半夏生のクモタコ(蜘蛛蛸?)の酢の物 あしらいに浜防風
・賀茂茄子の揚げ田楽
・ご飯と漬け物、みそ汁
今回も料理は文句なく堪能出来ました。
ただ、(お店にはええことですが)私には残念なことに開店からお客さんが多くて、大将に料理のことをあまり聞けなかったのが心残りです。
私一人なら、大将にいろいろと話を聞けるんですが、他にお客さんがあるとやっぱり遠慮してしまいます。私みたいな中途半端な若造が大将としゃべってては他のお客に感じが悪いかと思ってます。
特に後半は、店内がほぼ満席になり大将が料理自体に忙しそうでよけいに話しかけるのは憚られました。
さて、料理の感想ですが、
枇杷は、綺麗に種と枝に付く部分をくり抜いて半分に割ってありました。普段のビワのイメージと違うんで、少しの間どんな風に種が入ってたか考えてしまいました。
ジュンサイの冷やし椀は、お汁が寒天かなんかで固めたヤツを少し崩したヤツでした。
だから、汁物で”飲む”というよりゼリーみたいに”食べる”って感じでした。
アッサリしたダシと椀の底に敷いてある卵焼きのあえて少しキツメの塩味が具合良かったです。
お造りは、イカの甘みがすごくて美味しかったです。
本当は、一品料理のお品書きに鱧の湯引きがあったんで、それに変えられない聞きたかったんですが、”おまかせ”なんで我慢しました。
季節に1回くらいはどこかマトモな店で鱧を食べたいんですよね。
鱧は好物で、しかもその辺のスーパーで売ってるのと料理屋で出るのとの差が大きい食いモンなんで余計にそう思うんでしょうね。
最近はほんまに外食の機会が減ったし、そろそろ鱧の旬だと思うんでついお品書きにあるのを見て頼んでみたい誘惑に駆られました。
”H”のおまかせは、大将が全体を考えて出してはるんで、単品との差し替えや追加が出来ないことが多いんです。その日の内容によれば変更はききますが、たいていはそれでは”おまかせ”にならんということで断られます。
だから、頼んでたとしても鱧を入れてのおまかせは出来なかった可能性が高いです。
Hには、大将のコレと思うモンを食べに行ってるんで、鱧はまたどこかで近いうちに食べることにします。
鮎の塩焼きは、すっきとした姿の鮎で完全な天然物ではないと思うんですが、かなり天然に近いヤツの気がします。このへんも大将に聞きたかったけど、聞けませんでした。
炊き合わせは、かなりしっかりと炊かれて柔らかくなった万願寺トウに味が染みてて旨かったです。
酢のモンの蛸が”季節”ですね。
ちょうど半夏生が近い時期のメニューで季節感があるのが嬉しいです。
クモタコってどんな字を書くのが分からず、またどんな蛸のことか聞きたかったんですが、これも聞けず。ちょっと残念です。
”半夏生”ってここ数日の広告なんかに出て来てたんで、行く前からきっとタコが出るやろうと予想してました。珍しく季節と料理の予想が当たって、ちょっと嬉しかったですね。
ところで、半夏生とは、”半夏”という植物が生える時期から来てるんですね。なんとなく夏生が半分という意味かと思ってました。さっき辞書を引くまで夏至から11日目を指すことも知りませんでした。具体的には7/2頃にあたるんですね。
数日間くらいの幅のある時期をさすのかと誤解してました。
さらにネットで調べてみると農家では大事な区切りにするところが多いようですね。
この日には天から毒気が降るから井戸にふたをしたり、この日に取った野菜は食べてはいけないという風習があることも分かりました。
なんで半夏生に蛸を食べるのかと思ってたら、稲がたこの足のように根を張ることを願ってのことだと説明してました。どうも関西限定の風習のようです。
それにしても日本って季節毎に様々な節目になる日があって面白いですね。
料理に戻って、最後の賀茂茄子はナスビと油の相性の良さが分かる美味しさでした。
たっぷりと油を含んだナスビって特別な旨さがありますね。
私がお店に入った直後に入ったお客さんが、お箸に押してある焼き印のことを大将に尋ねはりました。何本単位で発注するんやというような質問やったと思います。
すると、箸は業者から買うけどそれを一本ずつ自分が確認して、問題ないという印に焼きごてを使って屋号を入れてるとの答えでした。昔は板場で職人が箸も削って出したそうです。
飾りで入ってると思った焼き印にそんな意味があったと初めて知りました。
このお店のお箸は、綺麗な柾目のところでそれもかなり吟味してはるそうです。このことは以前に大将に聞いたんですが、業者に嫌がられるくらい品質にこだわってるそうです。
今回の焼き印の話もたまたま他のお客さんが聞いたから知ることが出来ましたが、お客さんを”もてなす”って、本気でやると見えない部分での努力や気配りに際限がないですね。
そして上等なもてなしを堪能するには、お客の側にもしっかりとした素養がないとダメですね。私は上等なお客にはなれそうにありませんが、そんなことを知るのは楽しいもんです。
茶道の世界を背景とした和食のもつ深さをまた一つ感じられたのが今回の収穫です。